ワクワク不動怪獣日記

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ウルトラマンZ、全体感想

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ウルトラマンゼーット!


『ウルトラマンZ』「特別編 リ:ストレイジ」-公式配信- "ULTRAMAN Z" Special Episode -Official-

 

世の中が色々大変な中無事最終回を迎えたウルトラマンZ。それに関する振り返り乾燥記事となります。いくつかの項目に分けてお話しします。

 

・世界観

 デビルスプリンター、のちにベリアルの体の一部と判明した因子により宇宙各地で怪獣が狂暴化する事件が相次ぐ。この事態の収拾のため開発されたウルトラメダルを突如襲来した狂暴宇宙鮫ゲネガーグが強奪、それを追ってゼロとゼットが追跡…という導入から始まった今作。デビルスプリンター自体は最終的にはそこまで本編に絡む要素ではなく、それを利用して暗躍する寄生生命体セレブロや眠りから覚めた地球怪獣などが敵となりました。日本の地球防衛軍は対怪獣ロボット部隊ストレイジを結成し怪獣災害に対処しているという状態でしたが、ここで防衛チームが物語の主体のウルトラマンが久しぶりに帰ってくるという構図になりました。今まで戦闘機がメインだったのに対して今作はロボットを戦力とした防衛チームというありそうでなかった設定となり、セブンガーやウインダムといった往年のウルトラ怪獣が設定を変えて登場するというやり方はかなり驚いた覚えがあります。普通セブンガーが主役で活躍するなんて思いませんからね。

 

 

 ・ウルトラマン

 ウルトラマンゼット、ゼロの弟子という設定でしたがふたを開けてみるとまさかの押しかけ弟子。地球に降り立ってストレイジ隊員のナツカワハルキと一体化して地球の守りにつきます。日本語がところどころおかしく、まじめなようで天然なところもあるゼットと礼儀正しい熱血漢であるハルキとのコンビはとても良かったと思います。ゼットも親しみやすさもありながらハルキが悩んでいるときは一緒に考えようと手を差し伸べたり、地球人の問題には深く干渉しなかったりと適切な距離を保ちつついいコンビであり続けました。オーブやジードと同じくほかのウルトラマンの力を借りて戦うウルトラマンでしたが、理由が「半人前以下なのでこうでもしないと弱い」というのが面白いところでしたね。個人的にはアルファエッジのスラッガーヌンチャクアクションが一番好きです。ジードやゼロ、エース兄さんも参戦しましたがあくまでゲスト止まりであり、メインウルトラマンはゼット一人なのもいいバランスだったと思います。

 

ストレイジとジャグラスジャグラー

 ヒロインのヨウコ先輩、マッドサイエンティスト気質なユカ隊員、若き隊長ヘビクラといった主要メンバーに加えて、特空機整備班長のバコさんやモブ整備員など。ちゃんとチームメンバーがそろっている防衛チームなのも組織の存在に説得力がでててよかったですね。ウルトラの防衛チームで大所帯だとガイアなどを思い出しますが、描写としてはそれに負けていないものではないでしょうか。

 

 ストレイジの主力兵器である特空機、設定こそ違うもののかつてウルトラマンレオに登場したセブンガーの抜擢、カプセル怪獣とはまた違った戦い方を見せるウインダム、キングジョーを解析して作られたキングジョーストレイジカスタムとそれぞれが活躍を見せてくれました。特に嚙ませ扱いで頭を狂わされたり泡を吹いてたりしたウインダムに関しては、カプセル怪獣としてのウインダムより活躍シーンが多かったのではないでしょうか。

 

そして何よりヘビクラ隊長、役者さんがジャグラスジャグラーの時点でまさか…とは思いましたがまさかのジャグラスジャグラー本人。しかしギルバリス襲来時にストレイジの隊員に切迫した様子で退避を命じる、グリーザ相手にウインダムで出撃しようとしたヨウコを止めるなど、陰で暗躍しつつもストレイジのことは本当に大事に思っているという描写がしっかりとしており、安心しました。セレブロの思惑に便乗する形でウルトロイドゼロを開発させ、奪取一歩手前まで行くも、結局はハルキを見捨てることができず、目的であるウルトロイドゼロを諦めてまでハルキを助けようとします…。劇場版ウルトラマンオーブでも人質を取られて動けなくなったりと結局悪ぶっててもこういうところなんですよね。しかしハルキを助けようとして「またやっちまった」とつぶやくその顔はどこか満足な様子も見受けられました…。彼は正体を隠していた宇宙人であるかもしれませんが、確かにストレイジのヘビクラ隊長として行動し、その姿に偽りはなかったのがとてもよかったですね。最後にセレブロが捕まるのを見届けると「じゃあな」とストレイジを去っていきました。月の風来坊…一度は止まった彼の時間もちゃんと前に進んでいるというのがはっきりと描かれたのが大変感動しました。よかったねジャグラー

 

・敵

本作に登場する敵は、元から地球に生息する地球怪獣、宇宙からやってきた侵略者、セレブロの操る合体怪獣等大変バリエーションにと富んだラインナップでした。ニュージェネの敵怪獣は特にアイテムから召喚されて召喚者の意思で活動するタイプのものが多かったのでここは大変うれしかったです。新規怪獣・宇宙人はそれほど多くありませんでいたが、繁殖能力が初めて描写されたケルビム、初代と二代目の造形の差を性差としたレッドキング等既存怪獣にも新たな個性付けがされたり、久しぶりにQ準拠の個体サイズで登場したゴメスや、相も変わらず無茶苦茶な強さを見せたグリーザ等再登場が単純にうれしいメンツ、かつて登場した合体怪獣を新しいアイテムで変身しなおしたゼッパンドンやファイブキング等もいました。新規怪獣・宇宙人では個体がいくらでもいてそれぞれに個性が違い、武器で差別化ができるバロッサ星人や、合体怪獣ではあるがそれぞれが死体やミイラのように体に浮き出ていたラスボスのデストルドスなど数は少ないながらも魅力的なメンツがそろっていたと思います。

 

・脚本全体の感想

シリーズ全体の敵としてセレブロが暗躍しつつも、それとは関係ない単発エピソードお充実していたりと、通しでトレギアが邪魔し続けたせいで毎回後味が悪くなっていたタイがに比べるととても視聴しやすかったです。ハルキがただ卵を守るために戦っていたレッドキングの事情を知ってしまって戦えなくなり、頭ではわかっていてもグルジオライデンを倒す覚悟ができず悩んでいるときに現れたブルトンを通して、過去の父と会話して迷いを乗り越えるシーンなどはよく練られた構想だと感心しました。クライマックスのセレブロストレイジ上層部をいいように操る展開でもストレイジの皆が一丸となって協力し、総力戦にはキングジョーとウインダムに加えてセブンガーも参戦。「ウルトラマンの力に頼ってはいけない」という問題に対して、ヨウコ救出を特空機だけで成功させたり、他のウルトラマンの力で戦っていたゼットが最後はオリジナルの姿でデストルドスを倒したりと行動で示していたのもいいポイントです。細かい脚本の話だと、ハルキが母親の前では普段とキャラが全然違ったり、最終決戦前にハルキとジャグラーの間のわだかまりを解消する時間を設けたりと細かい心配りがされていたように思います。色々と企んでいたセレブロも最後は捕まって実験材料にされるというオチも、今までほかの生物をおもちゃのように扱ってきたセレブロにとっては因果応報な最期ですっきりしましたね。全体的にはシリアスとコミカルな様子が程よく同居した明るく楽しく暖かい作風であったように思います。個人的に好きなエピソードは、ゼットのキャラやセブンガーの活躍などで掴みがばっちりだった「ご唱和ください、我の名を!」、エースとの共演でエースがゼットに込めた思いを話す「最後の勇者」、特空機総力戦やヨウコ救出、決着と別れ等駆け足を感じさせずに多くの要素を詰め込んだ最終話「遥かに輝く戦士たち」等ですね。

 

 

 

 個人的な総評としては間違いなくウルトラの歴史に残る傑作であると言えるでしょう。この大変な世の中で素晴らしい作品に貢献してくれたスタッフ、特に放送前に亡くなられてしまった吹原先生には最大限の感謝を