ワクワク不動怪獣日記

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ウルトラマンデッカー総括感想

ウルトラマンデッカーの全体的な感想記事です。


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ウルトラマンデッカー」、「ウルトラマントリガー」の10年後の世界を舞台とした新作にして、ニュージェネレーションウルトラマンの10作品目となります。結論から言うと傑作といっても差し支えないほどの素晴らしい作品だったと思います。まだ劇場版を控えていますがとりあえずテレビシリーズの感想を話していこうと思います。

 

 

・「ウルトラマンデッカー」と「ウルトラマンダイナ」

ウルトラマンダイナによく似た外見、敵がスフィア…前作の「ウルトラマントリガー~NEW GENERATION TIGA~」のようにNEWGENERATION DYNAというタイトルにはなっていなかったものの、「ウルトラマンダイナ」を強く意識した作品であることは明確でした。トリガーはテレビシリーズに関しては少なくとも「ウルトラマンティガ」の要素を扱うのがお世辞にも上手とは言い難い作品であったため、また同じような失敗をするのではないかという不安と、監督とシリーズ構成がイーヴィルトリガーを中心にしてイーヴィルティガの要素を上手く咀嚼して再構成していた「ウルトラマントリガーエピソードZ」の布陣であるため何とか上手くやってくれるのではないかという期待が入り混じった感覚でした。

 

そして実際放映されてみると、防衛チームを中心として出現した怪獣の対処に当たり、各隊員の掘り下げをしっかりやりながら話を進めるという、これまでのニュージェネレーションウルトラマンの中でも一番オーソドックスなウルトラマンのイメージに近い構成となりました。明るいお調子者でありながら人一倍努力をする主人公のカナタに加え、まっすぐで思いやりの強いキリノ、冷静で完璧を追求するプロ意識の高いリュウモン、優しさと厳しさを併せ持った人格者のムラホシ隊長、怪獣の権威として敵の分析を行うカイザキ副隊長…といった個性的な防衛チームのメンツで話を引っ張るという感覚が久しぶりでしたね(トリガーだと隊員の個性が弱い部分があったので…)。また直接ウルトラマンダイナが登場した「繁栄の代償」ではあくまで通りすがりに加勢してくれたウルトラマンのスタンスで目立ちすぎることなく、それでかつ最後のガッツポーズや「未来は誰にもわからない」というメッセージからわかる人には「ああ…アスカだ…」とわかる塩梅が見事でした。

 

スフィアが敵という事で、ダイナ同様主な敵としてスフィア合成獣と戦うことになりましたが、無機物に取り付いていたダイナと対比してか、スフィアゴモラやスフィアレッドキングといった怪獣に取り付いて合成獣化するという形でお出ししてきました。さらに味方の人工知能HANE2ことハネジローや、グレゴール人やモンスアーガー、ネオザルスのオマージュであるネオメガス、デスフェイサーのオマージュのテラフェイザー、スフィアジオモス…。ダイナ怪獣とそのオマージュキャラクターの扱いはなかなか上手かったように思います。特にデスフェイサーのオマージュであるロボットのテラフェイザーが最終的に味方戦力に戻ったのも嬉しい所です。またダイナではスフィアというシリーズ通しての敵を持ちながら、スフィアが直接敵対するエピソードの割合はそれほど高くはなかった一方で、デッカーでは話数の違いもありますがスフィアと戦うエピソードの割合が多く、シリーズを通しての敵という印象付けに成功していたと感じました。ダイナとデッカーの関係に絞ると、設定面ではもちろんオマージュはあるもののそれほど強くダイナに囚われているわけではない塩梅が良かったです。

 

 

・「バズド星人アガムス」

スフィア以外のシリーズを通した敵として登場したのがバズド星人アガムス、「ウルトラマンオーブ」におけるジャグラスジャグラー、「ウルトラマンZ」におけるセレブロのようないわゆるヴィラン枠です。当初はアサカゲ博士として防衛チームの開発を担っている人物として登場しましたが、バズド星人アガムスとしての正体を現してからはテラフェイザーを操ったりヤプールと手を組むなどしてデッカーと激しく戦いました。スフィアが言葉を喋らない敵であった分、彼との対話のシーンが多くなりました。スフィアに襲われている地球人を助け、スフィアとの戦いに参加したら妻がスフィアに殺され、人類に恨みの念を向けるようになったという、乱暴に切り捨ててしまえば八つ当たりともいえる動機ですが、彼が自分を保つために繰り返していた妻の言葉が元々自分が彼女に教えたものであり、その事実をスフィアによる侵食で忘れていたという事実が判明して、スフィアに踊らされた哀れな被害者という面がはっきり印象つけられたのは良い悪役でしたね。最期には穏やかな元の優しい科学者に戻り、デッカーを庇って散っていきました。彼の魂に安らぎがあらんことを…。

 

 

・「ウルトラマンデッカー」と「ウルトラマントリガー」

ニュージェネレーションウルトラマンでは「ウルトラマンギンガ」→「ウルトラマンギンガS」以来の前作と同じ世界が舞台という事で、トリガーの要素がどう扱われるかも関心の一つでした。まず防衛チームに関しては、ガッツセレクトは宇宙進出事業推進のために規模が縮小され、ナースデッセイ号も無人化して運用されていましたが、スフィアの電波妨害により円核兵器が使い物にならなくなったため、ナースデッセイ号が有人兵器に戻るとともにガッツファルコンも有人化されました。前作の遠隔操縦はどうしても緊張感に欠けると感じていたので、この改変をスフィアが電波妨害を仕掛けてきて遠隔兵器が役にたたないという理由づけまでして行ったことは評価したいです。またリュウモン隊員がかつてメツオロチが出現したときにムラホシ隊長に助けられていた…という過去回想の挟み方もトリガーと地続きの作品であることを生かした組み立て方は上手かったですね。ナースデッセイ号が未だに主力級の活躍を見せていたのも嬉しい所。

 

またトリガーと共に戦っていた先代ガッツセレクトのメンバーは同じくスフィアの襲撃を受けた火星で戦っており、メガロゾーアがスフィアの力で復活した時に、かつて笑顔にできなかったことを悔やんでいたカルミラを救出し共闘したり、真っ先にラスボスであるマザースフィアザウルスと交戦し、最後の作戦でも先陣を切って活躍してくれた事や、カナタに対して戦いの先のこれからの事を問いかけたりと前作主人公としての風格を見せつつも現主人公を立てるような形の扱いは嬉しかったです。基本は火星で戦っているものの、メガロゾーアの復活やマザースフィアザウルスの襲来といった緊急事態にはしっかりと駆けつけてくれる先輩として頼もしくなったトリガーもデッカーの魅力の一つといえるでしょう。

 

 

・単発エピソード

スフィアと直接関係のないエピソードも、面白いエピソードが多かったです。スフィアに閉ざされた地球に取り残された宇宙人を扱った「湖の食いしん坊」「誰がための勇姿」では、地球に取り残された宇宙人が地球で生きている姿を描き、ガッツセレクトがそれを助ける描写がありました。メトロン星人マルゥルやマグマ星人のようにTPUで働く宇宙人も多いことから自然な描写なのもよかったですね。またクトゥルフ神話を元ネタとして土着の伝承として海底原人ラゴンが登場した「らごんさま」では、今の世の中に対する息苦しさを抱えつつ、それでもこの世界で生きていこうというウルトラマンデッカーの堅実かつ前向きの作風が強く表れていて良かったと思います。ウルトラマンは元々縦軸の強さよりオムニバス形式のエピソードの集まりとしての側面が強いので、縦軸をしっかりやってくれることはもちろんの事、単発エピソードが面白いのも良い作品の評価基準だと思ってるのですが、デッカーはそこも申し分なかったように思います。

 

 

・爽快なハッピーエンド

スフィアについては非常に数の多い敵であるという事や、ダイナで登場した個体は「ウルトラマンサーガ」の時代に至ってもまだ根絶されておらず、デッカーのスフィアも根絶できずに戦いは続くエンドになるかも…ウルトラマンダイナの最終回でダイナがブラックホールに飲まれて終わったようにデッカーも消えてしまうのではないか…という不安がありました。しかしスフィアに対して明確にノーを突きつけ、撃滅し、世界は元に戻った!というストレートなハッピーエンドに終わりました。本当に嬉しかった!ラスボスのマザースフィアザウルスが本当に憎たらしい顔付きで倒した時の爽快感も非常に高いのも良かったです。

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OPをバックにマザースフィアザウルスに総攻撃を仕掛けるガッツグリフォン、ナースデッセイ号、テラフェイザーウルトラマンデッカーの爽快感といったら!「全てを一つにする」という薄っぺらい主張を押し付けるスフィアに対して「みんなバラバラだから前へ進める」と啖呵を切り反撃に転ずるというシーンで各戦力が総攻撃を加えるのが本当に良いんですよ…。スフィアを倒して、閉ざされていた地球が解放されて宇宙に出ていた宇宙船が地球に帰ってくるというシーンが最後であるというのも、絵面だけでこれ以上ないぐらいの大団円を表現しており最高の最終回でした。

 

 

・まとめ

ウルトラマンの中でも非常に手堅くまとまった傑作です。ウルトラマン列伝という形式でなんとかテレビシリーズを作れるようになった「ウルトラマンギンガ」から生まれたニュージェネレーションウルトラマンシリーズに、これほど安定感のある作品が出てくるようになった事に感慨すら感じます。来週に劇場版が控えており、そこでウルトラマンデッカーという作品は一応の完結となりますが、これからも前向きに走っていく新時代の勇者として活躍することを期待しています。