私の最も愛したラブコメである「忘却聖女」が完結した。
まあ書籍版は大分前に完結していたのだがコミカライズの最終巻が先日出たし、いい機会なので話をしようと思う。
ちなみにWEB版としてなろうで全話読める、読んでいない人は先に全部読んでしまおう。
https://ncode.syosetu.com/n3712gq/
思いっきりネタバレ込みで話すので注意してほしい。
まず、あらすじはこうだ
>アデウス国の聖女マリヴェルは、何の変哲もない、いつも通りの朝を迎えたと思ったら皆に忘れられていた。
衣食住全てを失った聖女は、ただ一人聖女を忘れていなかった神官と共に再び神殿を目指す。
タイトル通り忘却された聖女というわけだ。なお作者はこの作品のジャンルはラブコメだと主張している。主人公のマリヴェルは初手で家族ともいうべき神殿の人々から忘れられ、その後顔を焼かれたり腕がもげたり恋人が死んだりするのだが、作者がラブコメだと言っているのでまあラブコメなんだろう、私もあまりラブコメに詳しいわけではないので作者がラブコメと言っているならラブコメなのだ。
ではこの作品のコメディたる部分は何か。
会話である。
主人公のマリヴェルと、彼女の事を忘れていなかったただ一人の神官エーレの二人の会話が特にそうなのだが、漫才のような軽快なテンポで会話が進み、事態は割と重くても会話の雰囲気で明るい話のように聞こえたりする。なお主人公のマリヴェルが基本ボケの担当であるため、マリヴェルにそのような精神的余裕がない状態(例:スラムから救ってくれた神官長の事を何とかお父さんと呼ぶ決心がついた翌日に神官長含め親しい人全員の記憶から自分の事が消えた)だと誤魔化しきれずに空気が非常に重くなる、最近のラブコメは過酷だ。
また、この主人公の特徴として自分を完全にモノとして認識しているという点がある。
自分の事をどうしても人間とは思えずモノとしてしか認識していない、自虐でそうなっているわけでもなく、純然たる事実としてそう認識しているのだからタチが悪い。
じゃあどうやってこの主人公を人間にするのか、それは愚直に愛を注ぎ続けることだ。いくら取りこぼそうが何度でも何度でも何度でも愚直に。特にエーレの熱量が凄まじく、何度婚約した事実を忘れようがそのたびに婚約指輪を用意し、さらに全部思い出してから自分が忘れてしまったという事に対してすらキレ始め、さらに追加で婚約指輪を用意し、結果箱の中に指輪がじゃらじゃら入っているという恐ろしい状態になる。ラブである。ラブとコメディがあるから確かにラブコメなんだろう。そうかなあ。
で、過程の説明は省略するが、最終的に彼女たちは不老不死に近い存在となる。
彼女らは人の枠組みから外れ、見知ったものが寿命でいなくなるのを見送りながら最後に旅に出る。寂しいオチに見えるかもしれないがマリヴェルとエーレは非常に楽しそうなので悲壮感はない。エーレに至ってはマリヴェルがいつか世界中から忘れられたら、その時に初めてマリヴェルは自分だけの聖女になるんだとかとんでもない事を抜かしている。恐ろしい愛だ。
私が好きななろう小説トップ3(他二つはサイレントウィッチとおまごと)の1つが完全に完結したが、マリヴェルは振り向きもせず走り去っていきそうだし、エーレはマリヴェルの事を早く忘れろと圧をかけてきそうな迫力がある。色んな作品を読んできたが、主人公たちが自分を完全に置いて行ってしまった感覚と、それでもいいと思える納得、幸福感が同居するのが非常に珍しいことだったので、しばらくこの作品の事は忘れないと思う。
