(まちカドまぞく×神様とクインテットSS、「2019:のけものまぞく同盟」と話が繋がっています。)
・登場人物
吉田優子/シャドウミストレス優子
千代田桃
陽夏木ミカン
佐田杏里
小倉しおん
日下部うらら
烏口あかね
梅皿こもも
お寿司
溝引トーコ
薄墨りん
「2019:芸術を学ぼう」
「うーん…」
あの日、放課後文化研究委員会が現れ、そして消えたあの事件以来、わからないことが多すぎて私たちは困っていました。
「とりあえずあのクロとかいう人に話を聞かないとどうにもならなそうだよね」
「だけどどうやって探せばいいのかしら…この間は変なオーロラに紛れて消えてしまったし」
桃もミカンさんも悩んでいるようだ、実際何が起きたのかわからなった上に謎の人物まで現れたのだから仕方がない。
「やあみんな難しい顔してどうしたの~?進路とか?」
「皆そろってるねよかったぁ」
「あ、杏里ちゃん、小倉さんも」
そこへ杏里ちゃんと小倉さんがやってきた。
「この間見せてもらった結晶体だけど、まだよくわからないんだよねぇ。桜さんのメモにも該当しそうなところはないし、魔法少女ともまぞくとも違う魔力が満ちている感じ…なんというかキラキラした魔力って言えばいいのかな。星みたいだからとりあえず星結晶って名付けてみたよ」
「星結晶…」
「とってもきれいだよね~」
あの後、手に入れた結晶の調査を小倉さんに(壊さないようにと念押ししたうえで)頼んだのだが、結局まだよくわからないということだ。あの本…不思議の国のかすみちゃんが変化した結晶、いったいどんな意味があるというのだろうか。夢の中に出てきた仙人ごはんという人は大事にしろって言っていたけれど具体的にどうすればいいのかがよくわからない。
「そういえば杏里ちゃん何を持ってるんですか?」
「ああこれ?通学路で貰った大学の学祭の案内だよ~」
「学祭?」
「ほらこれチラシだよ」
杏里ちゃんから見せて貰ったチラシには鈴ヶ谷美術大学学園祭と大きく書かれていた、日付を読むとどうやら
今週末に開催されるようだ。
「…桃、この大学知ってますか?」
「いや、聞いたことがない。位置的にはここからそう遠くないのに」
「もしかしたら前の放課後文化研究会の時みたいに…!」
前の時は聞いたこともない部活が突然あって当たり前のように現れ、そして消えた。今回もまたそのようなことが起きているのではないかと思ったのだ。
「とりあえず行ってみたほうがよさそうね」
何はともあれ、週末の予定が決まった。
週末、私と桃とミカンさん、ごせんぞで鈴ヶ谷美術大学にやってきた。学祭が開かれていることもあってか大勢の人が訪れており活気に満ち溢れていた。
「私、大学って初めて来ました!」
「シャミ子、一応何か起こるかもしれないから注意してね…」
「…!そうでした」
この人が多いところでこの前のような異変が起これば大勢の人が危険な目に合うかもしれない。気を引き締めようとしているとミカンさんが声をかけてきた。
「…シャミ子、桃、なにかしらあれ…」
ミカンさんの指さす方向に一角に明らかに怪しいゾーンがあった。小屋のように見えるが、まわりに名状しがたいオブジェのようなものが大量に陳列されており異様な雰囲気を醸し出していた。
「リリスさんの親戚とかじゃないの?」
「失礼なことを言うな!知らんわあんなオブジェ!」
「とりあえず入ってみようか」
「あの~失礼します」
扉を開けた。
「あああっ、けっkkけけけ見んggがががっが学sssssssyyyy者ののののkkkkkかかかか方ddddddでssすkかかかかか??????(訳:見学者の方ですか?)」
「失礼しました」
扉を閉めた。
「あっ待って!!帰らないで!!うららは落ち着いて!言葉になってない!」
「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません…私油絵学科2年の日下部うららと言います」
「同じく油絵学科の2年の烏口あかねだよ~」
「テキスタイルデザイン学科2年の薄墨りんよ」
「私はグラフィックデザイン学科の2年溝引トーコ、あっちで作業してるのが彫刻学科2年の梅皿こもも。本当はもう一人いるんだけど客引きしてるから留守なんだ」
「よろしくなのじゃ、こっちは柴犬のお寿司」
「わん!」
「シ…吉田優子です」
「千代田桃と言います」
「陽夏木ミカンです」
とりあえずお互いに自己紹介をしあった。先ほど噛みまくっていた三つ編みの人がうららさんというらしい。お茶を入れてくれたのはいいが容器が前衛芸術のようで怖い。
「本当はからけんにはちゃんとした部屋があるんだけど、こないだ爆弾が爆発してふっとんじゃってね~」
「え、爆弾…?」
あかねさんの口からとても物騒な単語が聞こえてきた。普通の大学に爆弾などあるはずがない。
「(やっぱりここで何か起こってる…?)」
「ところでこももさんは何をしてるんですか?」
「ああ、こももはすでに外国の美大を卒業してて彫刻家として活動してるんだけど、最近スランプ気味らしくてね、なかなかいいイメージが浮かばないんだってさ」
さきほどからうんうんとうなっているのはそのせいだろうか。
「む?その像…」
その時手に彫刻刀を握ったこももさんが近づいてきた。
「!!これじゃ!!」
「な、なんですか!?」
こももさんはごせんぞをじっと見つめたかと思うと急に叫び出した。
「この生きているとしか思えない像!禍々しくも絶妙にダサい造形!インスピレーションが湧いてきたのじゃ!」
「黙って聞いてれば失礼だな!?」
「おい像が喋ったぞ!?」
「どうかしたんですかトーコちゃん?」
「像くらい喋るわよ今時」
「おなかすいたな~」
「え…私がおかしいのか…?」
それからこももさんはごせんぞを見ながら作業に入り始めた、その目は真剣そのものだ。ただ周りの異様な像に囲まれているせいで何かの儀式をやっているようにも見える。正直ちょっと怖い。
「そういえばこの大学で最近おかしな事とかありませんでしたか?あとは変な人を見たとか」
桃が質問する。前にも発生した時空の歪みやクロさんの目撃情報等があればどこかしらで噂になってると思ったからだ。先ほどの爆弾で研究室が吹き飛んだ件も気になる。
「おかしいこと…?トーコちゃんGPSが急に機能しなくなってトーコちゃんの居場所がわからなくなったぐらいだけど…」
「トーコちゃん…え?何?」
「おいまた仕込んでたのかやめろ!まさか今もついてるんじゃないだろうな外せ!」
「ちょっと展示物もあるから暴れると危ない…」
そう言い終わる前にトーコさんとりんがひときわ大きい展示物の像にぶつかった、バランスを失った像がこちらに倒れ込んできた。
「危ない!」
「皆さん大丈夫ですか!?」
「うららさんこそ…あの…頭…」
そう言ううららさんの頭には深々と彫刻刀が突き刺さっていた。
「あああああああああ!!!!!!皆と買ったお気に入り服があああああああ!!!(プッシャアアアドクドクドク)」
「そこですか!?」
「最高傑作…ワシの…」
「「ご、ごめんなさい…」」
震えるこももさんに謝るトーコさんとりんさん。あたりは砕けた像のかけらと見せられない液体で大変なことになっていた。
「きゅ、救急車…」
「大丈夫です、かすり傷ですから。とりあえず片付けないといけませんね…道具が散らかってて危ないので吉田さん達は申し訳ありませんけど…(トロォ…)」
「え…?は、はい…い、いったんこれで私たち失礼しますね…」
「…どう思いました?」
「…とても酷く悪影響が出てると思う、しかもそれが異常だってことを誰も認識できてない…」
「しかし前のような歪みは発生してなかったし、クロとかいう人も出てこなかったわね」
「もうしばらく様子を見たほうがよさそうだな」
この時の私たちは知らなかったのです。どこまでが正常で、どこまでが異常なのか。
次回予告
「ごせんぞが通りすがりのクマに!!」
「これを受け取るのじゃ!」
「非常食!?どうしてここに!?」
「…神様?」
「2019:神様とカルテット」